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 中国-シンセン発~アジアのモノづくりをリードする。
 
取材日:2008年8月30日(土) 
場所:中国-シンセン テクノセンター(日技城)内 偉力工業有限公司

谷繁 寿彦氏に聞く

Toshihiko Tanishige
国内大手制御メーカー製造部門を長年に渡り経験し、特に金型の設計・製造におけるマネージメントと超精密な加工技術に精通する。同メーカーの取締役を経て退職後は国内工作機械メーカーの取締役として活躍。精密加工技術の動向をテーマとした数多くの技術講演を務めるなど、業界での知名度も高い。
現在、中国-シンセンの偉力工業有限公司と技術顧問契約を結び、単身シンセンに乗り込み、現地の従業員を相手に技術指導にあたる。同氏のマネージメントは徹底した現場主義で、金型モノづくりのシステム再構築に邁進中である。また、弊社CAD/CAMシステム事業の創成期にも多大なご尽力をいただく。
 
【偉力工業有限公司】
偉力工業有限公司(広東省シンセン市)は、市郊外のシンセンテクノセンター・日技城(左写真:以下テクノセンター)内に工場を置き、成形(インサート成形含む)、及び金型の設計・製作、自動車部品組立行う。同社は、ISO9001, ISO14001を認証取得するなど、全社活動を通じ世界に通用するグローバル企業を目指す。主な金型加工設備は、型彫り放電(7台)、ワイヤー放電(5台)、細孔加工機(2台)、マシニング(6台)、研磨機(7台)である。工場があるテクノセンターは、日系の中小製造企業が中国で行う生産活動を支援するために、1992年に設立された民間企業で、中国での人材派遣や資材購入、通関業務などを代行する。したがって、進出企業は技術や機械さえ持ち込めば工場経営に専念することが可能となる。テクノセンター内には、現在、約50社の製造企業が集積し、中国の豊富な労働力を受け入れ、グローバルな生産活動を展開している。
 

新金型生産システムのプロジェクトを発足

谷繁氏は、2007年7月末に偉力工業の技術顧問として着任し、すぐに自ら現場を視察、現状の業務環境、人(スキル)、設備、工法など、現状を把握し、それらを徹底分析した。2007年9月より現地スタッフ7名によるプロジェクトチームを発足し、改善計画をスタートさせる。”「新金型生産システム」の構築”をテーマとした12項目の基本方針を設定し、プロジェクトチームが中心となって現場改革を実行。2008年6月より製造部門に「新金型生産システム」の導入を開始、そして現在、これら改善活動が実を結びつつあり、設計~加工~組立まで、「新金型生産システム」が大きな軌道に乗り始めた。谷繁氏は、効率、精度、品質などにおいて、同社金型モノづくりの生産技術を日本のトップレベルに引き上げることを念頭に、その実現は近く、すでにかなりのレベルまで到達していると語る。

工程毎に寸法検査を実施、多能工化でリスク分散

「新金型生産システム」において特に重点を置いていることは、工程ごとに検査を入れる、つまり各工程で寸法測定を行わないと後工程では加工できない仕組みを確立することである。まさに「品質は工程でつくり込む」を実践。寸法のチェック体制を強化することで、無駄なロスを防ぎ製品の品質を向上させることに成功した。また複数の製造工程をこなす、いわゆる多能工の育成にも着手した。例えば、放電加工であれば、ワイヤー放電加工機と型彫り放電加工を担当、グループ別では、1つのグループがCAMから金型組立まで担当するなど、現場作業者のスキルの幅を広げるとともに、担当者不在時でも組織的対応ができるようリスクを分散する。これらの取り組み以外にも、工作機の夜間無人運転による稼働率向上や、放電加工技術を駆使した合理的、効果的な工法の確立、最新設備の導入による高速化、高精度化を推進することで従来手法から脱却し、「新金型生産システム」を定着させることで、さらに工場全体スキルの底上げを図る。

 
 

アジアのモノづくり発展のために

これまでに谷繁氏は、さまざまな生産技術を現場に注入してきたが、「現地社員の定着率」という、避けては通れない課題がある。しかし、この問題を支えるのも「新金型生産システム」の役目、つまり、従業員が辞めても即対応できるシステムの構築と継続的な運営が不可欠である。また、日本国内では、熟練技術やノウハウの海外流出を懸念する声もあるが、日本の中小製造業が置かれた環境を考えると、中国華南地区のような安価で豊富な労働力を無視することはできない。むしろ、彼ら(彼女ら)にスキルを与え、その能力を最大限に活用し企業競争力を高めることは、企業戦略としてさらに重要なテーマになると思われる。そういった意味で、日系の中小製造業の海外進出とビジネスをサポートするテクノセンターは、世界のモノづくりを支える日本の金型製造業にとっても、またアジア全体のモノづくり発展のためにも、非常に重要な役割を担っている。谷繁氏は、残り約11ヶ月の契約期間、中国-シンセンの地でカイゼン精神を定着させ、さらなる生産性の向上を図っていくだろう。最後に、谷繁氏には、ご多忙の中、本件取材に快く応じていただいたことに深く感謝申し上げるとともに、同氏の異国でのご活躍に心から敬意を表したい。
 
 

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